人間サイコロ
涙は絶え間なく溢れ出すけれど、言葉はなかなか出てこない。


イクヤへの気持ちが、痛いほどに胸に詰まっているというのに。


「早くしろよ。残り30分だぞ」


カズヤに言われて画面を確認すると、カウントダウンは半分以上減っていた。


こうしている間にも、イクヤの死が近づいているのだ。


「殺していいって言ってんだから、さっさと殺せよ」


カズヤはイクヤの前に立ってそう言い放った。


「俺は誰も殺さない!」


カズヤが近くにいることを気配で感じているのだろう、カズヤが立っている方へ顔を向けて言った。


「よく考えろよイクヤ。お前が死んでこの女が生き残ったら、その時俺はこいつを利用するぞ? ミッションに使うだけじゃない。ここは誰も出入りできない密室だ」


カズヤの言おうとしていることを理解して、吐き気を感じた。


こんな時に、よくそんな想像ができるものだ。


「カズヤは……ユウに死んでほしいのか」


イクヤが震える声でそう聞いた。


「別に。ただ、ミッションをクリアしたいなら俺は手伝う」


カズヤはそう言いながらイクヤの前髪を鷲掴みにし、顔を近づけた。
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