人間サイコロ
「ナメやがって……」


カズヤの顔が怒りで真っ赤に染まったその瞬間、あたしはイクヤの手元に届くように金槌を滑らせた。


「受け取って!」


そう叫んだ時、イクヤの手に金槌の柄がぶつかった。


まるで条件反射のようにそれを握りしめるイクヤ。


カズヤの拳が振り上げられ、イクヤの顔面めがけて振り下ろされようとしている。


しかし、一瞬だけイクヤの方が早かった。


握りしめられた金槌は、カズヤの後頭部を打ちつけていたのだ。


「ぐっ!」


カズヤは低い唸り声をあげ、イクヤに覆いかぶさるように倒れ込んだ。


イクヤはカズヤの下から這い出し、続けざまに金槌を振り下ろした。


それはカズヤの背中に当たり、ボキッと骨が折れる音が響いた。


それはカズヤの腕に当たり、妙な方向に折れ曲がった。


そしてそれはカズヤの後頭部に当たり……グシャッと何かが破損する音が聞こえてきて、カズヤは動きを止めたのだった。
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