人間サイコロ
そして、記事は10年前の災害にうつる。


《大きな台風が起こり、山沿いにある○○地区はほとんどの家屋が水害に遭った。
その中でも一際大きかったのがゲーム会社とされている……》


「どうして、ゲーム会社だけ被害が大きかったんだ?」


「このページには当時の写真も載せられているんだけど、少人数のゲーム会社は平屋だったの。土砂の場合は2階へ逃げるように言われているけれど、この会社に2階はなかった。それに、他の民家と比べても山に近いところに建てられていたみたい」


あたしは当時の写真を確認してイクヤに説明した。


しかし、イクヤはまだ難しそうな顔をしている。


「避難勧告を無視して、仕事をしてたってことか……?」


「そういう時もあるよね。まだ大丈夫だと思って、非難を送らせて被害に遭うの」


「それは、そうだけど……」


イクヤは納得いかない様子だ。


「ここに書かれていないなにかがあるとしても、ゲームは先生が供養してくれたんだよ? 心配しなくても大丈夫だから」


あたしはイクヤの手を握りしめてそう言った。


あんな目に遭ったのだから、簡単に安心なんてできない。


あたしもイクヤも、夜になるとあの悪夢にうなされる毎日が続いていた。
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