人間サイコロ
肌を傷つけることができて、先端がとがっているものはこれくらいしかない。


「確か、書道部で使わなくなった道具があったはずだ」


カウントダウンが減って行くのを見て、先生は慌てた様子で道具を探し始めた。


その間、あたしは自分の小指の付け根に釘を押し当てていた。


チクリとした痛みが駆け抜けて、顔をしかめる。


それでも釘を持つ手に力を入れて、あたしはゆっくりと釘を移動させた。


イレズミの絵柄なんてなんでもよかった。


とにかく、なにかしなきゃいけない。


あたしは釘を不規則に動かし、後から後から血が滲んで出て来る。


「あったぞ!」


先生の言葉にハッとして顔を上げると、片手に墨汁を持ってやってきた。


「これ、どうすればいいんですか?」


「傷口に墨汁を流し込んで色を付けていけばいいはずだが……」


先生はそう言いながらも、おぼつかない手つきだ。


誰もこんなことやった経験がない。

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