人間サイコロ
あたしはにじみ出て来た血を素早く拭き取ると、先生がその上から墨汁を垂らした。


皮膚がビリビリと刺激されるような痛みがあり、顔をしかめる。


でも、背中を焼かれた時に比べるとこんな痛み優しいものだった。


グッと下唇を噛みしめて痛みに耐えるが、それはほんの一瞬の出来事だった。


小さな傷の中はあっという間に墨汁で一杯になり、ミッションはクリアされたのだ。


あたしは画面上に出ている《クリア》の文字を確認し、ようやく体の力を抜いた。


「これで成功したってことか……」


先生は画面をマジマジと見つめて呟いている。


リアルとゲームが本当に連動しているので、目を丸くしている。


「次はイクヤの番だよ」


あたしはそう言い、イクヤの手を取って画面の前へと移動した。


「1人クリアしたら、すぐにカウントダウンが始まるんだな」


先生はため息まじりにそう言った。


そう。


画面右上の、サイコロを振らせるためのカウントダウンはすでに開始されている。


あたしたちに休んでいる暇なんてないのだ。
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