人間サイコロ
「ほらな、簡単に見つかった」


カズヤは引き出しから鍵を取り出してニヤリと笑った。


「でも、本当に開けていいと思う?」


ホナミが慌てた様子で言った。


「なんだよ今更。怖気づいたか?」


「だって、金庫の中に入ってるものがゲームとは限らないじゃん? もし先生の大切なものだったらどうするの?」


カズヤの言葉にホナミは早口に説明をした。


綺麗な顔の額にジワリと汗が滲んでいるのが見えた。


「その時は金庫をしめて鍵を戻すだけだ。そうだろ?」


カズヤはホナミの目の前で鍵をゆらして答えた。


確かにその通りだ。


大切なものなら、見ていないふりをしてこの部屋を出ればいいだけ。


そうなると、もう誰もなにも言えなかった。
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