薬指に愛の印を
オメルがせとかに香水瓶を渡す。せとかが「シュクラン(ありがとう)」と微笑むと、オメルが優しくせとかの頭を撫でる。

トクントクン、と温かい音が響く。せとかはとても幸せだった。しかしその時ーーー。

「お前、オメル・アブドーラだろ?」

突然聞こえてきた声に、せとかとオメルは後ろを振り返る。そこには三人の男性が立っていた。その顔はニヤニヤ笑っている。

せとかが隣を見ると、オメルは苦しげな表情だ。男性の一人が言う。

「お前みたいな根暗野郎が女の子とデートかよ?ハハッ、笑えるな!」

「君、俺たちとデートした方が楽しいかもよ」

男性の一人がせとかに言う。オメルがせとかの手をそっと掴んだ。その目は悲しげに揺れている。せとかはギュッと手を握り返した。

「私は、オメルと付き合っています。それに人のことをそんな風に馬鹿にする人と関わりたくありません」

そう言い、せとかはオメルと手をつないだままその場を離れた。
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