薬指に愛の印を

「サディーク！（友達！）友達になって！」

せとかは笑顔で言う。しかし、オメルはどこか困った様子だ。そして席を立ってどこかへ行ってしまった。

「何かいけないことをしちゃったかな……？」

せとかは一瞬落ち込んだが、オメルと仲良くなりたいと思いスマホを片手に話しかけることにした。

「アクル！（食べ物！）好きな食べ物は何？」

「エジプトで有名なものって何？」

「ファン・アル・ムースィーキー！（音楽！）音楽好き？」

しかし、せとかが話しかけてもオメルは困ったような顔を見せるだけで何も話してくれない。それはせとかだけではなく、他の人の質問にもだった。

やがて、「何、アイツ。感じ悪」という空気が広がりオメルから人は遠ざかってしまった。

「せとかももう話しかけない方がいいって！笑わないし、話さないし、感じ悪すぎるよ！」

友達はそう言ったが、せとかは首を横に振った。

「遠い外国に一人でいるんだもん。言葉とか知らなくて当然だよ」