高遠くんの熱にうなされて



「ほら、早くしてよ。鈴がそれ終わらせないと、僕帰れないじゃん」


「帰れなくないでしょ……。私のことなんて、置いてけばいいじゃん」


……なんて。


高遠くんが待っててくれるの、嬉しいのに。


「……ふーん。鈴は僕に置いてかれてもいーんだ?」


そうやって聞いてくる高遠くんはイジワルで。


「……いーもん、別に」


だけど、嫌いなのは、素直に「寂しい」って言えない自分の方。


「あっそ。じゃ、頑張ってね」


そう言ったかと思えば、あんなに強めてきてた腕を簡単にほどいてしまって。


高遠くんの体温が離れてしまって、一気に寂しくなる。


そんな私の気持ちに気付くはずもないまま、高遠くんはさっさと荷物をまとめてしまう。


「じゃーね。せーぜーがんばりなよ」


……そんなにアッサリ。


けれど、高遠くんが残してくれた「がんばりなよ」の一言だけで、私はがんばれてしまいそうになるから、私って単純。


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