【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
2
夢見がち彼女
灰野 伊吹Side*
◇
合宿終了の翌日から息つく暇もなく授業っていうのはどうかしてる。
「俺たちの疲れ察しろよなぁ」
と昼休みの山本もご立腹だ。
売店でパンでも買おうと廊下を歩いていると、向こう側から花がポケットにハンカチを仕舞いながら歩いてきた。
派手じゃないし、友達少ないし。
でも一人で歩いていてもなんとなく目をひく不思議な雰囲気。
藍田さんのかわいらしさとは全然種類が違う何かに惹かれたんだけど。
それが何だったのか、今もわからないけど、喋りやすかったし結局相性が良かったから付き合ったのかなぁー。
「どうしたの?伊吹」
花は口角を優しく上げて、ふっと笑う。
一瞬どきっとした。飾ってある絵が動き出したかと。
「あれ?今私のこと見てなかった?用事かと思った」
「なんでもないよ」
「そう」
すっと通り過ぎる花の姿を、山本が目で追っている。
見すぎだろ。