【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。


「灰野、これ何?」


彗はなんで、こっそり置いたものを、わざわざ掲げる?


「寄付」


「灰野はそれだけでお腹すかないの?男子がそんなパン一個じゃ足りないでしょ」


「……歩きながら一個食べてきたんだよ」


「俺ずっと隣にいたのにそれ、気づかなかったわー。もしかして伊吹、マジシャン?マジシャンなの?」


山本がくそうざい。



「プ。健気ー」


腹を抱えて笑う彗のことはもうほっておく。


「灰野くんからのプレゼントって言ったら、胡桃ちゃん喜ぶだろうなぁ」


言ってもいい?ってリホはいたずらっぽく首を傾げる。


「言わなくていいから」


どすっと席についてパンの袋を開ける。甘い方を藍田さんにあげたけど、こっちがよかったかな……?


てか藍田さんって、甘いの食べれんのかな?



タオルを洗いに行っていたナギが戻って、藍田さんの席をもう一度拭く。ひっくり返してまた拭く……。お前A型か、意外に。



「あれ、このパンなに?胡桃の好きな奴じゃん」


まじで?よかった。


……てか本当にナギはなんでもよく知ってるな。


お前が幼馴染で俺がぽっと出なんじゃねーの。



「灰野くんから胡桃ちゃんへ愛情ぶかいプレゼントなんだよ、ソレ」


リホさぁ……余計な言葉満載でハート乱舞させながら言うなよ。


「へぇー」とナギがこっちに視線を飛ばす。


「なんだよ」

「いや?」


……食べよ。



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