【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
罪深いひとたち
藍田 胡桃 SIDE*
◇
パンもらっちゃったんだよ?
灰野くん……優しすぎ。
お礼に行ったら、すぐに廊下に出て行っちゃった。
もうちょっと喋りたいって思っているのはあたしだけで。
灰野くんはそうは思わない。
他の人とは楽しそうに話すのに、あたしにだけはこんなにそっけない。
基本的にあたしのことが嫌いなのはわかってるつもりだよ……。
だけど、なんでたまに優しくしてくれるんだろう。
あげて、落とされる。この感覚わかる?泣きたいよ。
手のひらに収まるクルミシュガーパンをじっと眺めてしまう。
ぐぅ……。とお腹も鳴くから食べよ。
「灰野くんがクルミシュガーパンを買っているところが可愛いよね?」
リホちゃんがふふっと口許に手を当てる。
「プ。それ言っちゃだめなやつ!」
彗が肩を震わせていて。
「何が?これって男子が買ったら可愛いの?」
甘いから?
でも甘いパン、ナギちゃんだっていつも食べてるけど。
「何でもないよクルミちゃんっ。さっさとお食べ」
満面の笑みでリホちゃんに肩をトントンと叩かれて、一口齧る。
やっぱこれ、おいし。