【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
藤堂花さんは、灰野くんとついこの間まで付き合っていた人だ。
おとなしい優等生タイプの美人な子がクラスの真ん中のちょっと悪そうな生徒と惹かれ合うっていうのはありがちで。
藤堂さんと灰野くんはまさにそれ。
「伊吹にこれを返してほしくて。頼んでもいい?」
なだらかな声が灰野くんを、伊吹と呼ぶ。
差し出された四角いプラスチックケースを受け取った。
あたしの手に渡ったCDは、灰野くんの好きな曲なのかな。
見たこともない歌手の名前。
ケースに入った細い傷。
ふたりだけの軌跡みたいに見える。
「今日伊吹に返す約束をしていたんだけど、私早退するから。ごめんね」
「ううん。でも早退って具合大丈夫ですか?」
「ありがとう、大丈夫。それよりどうして敬語なの?」
ふふっと口許を押さえて笑う藤堂さんは気品があって。
あたしより少し背の高い彼女は、年上、いや、何もかもが上に見えた。
「じゃあ、お願い」
藤堂さんは軽く会釈をして去っていく。
長い黒髪にのっかる光のリングが、眩しくって悔しいな……。
……藤堂さんと灰野くんが付き合い始めたのは、高校1年の春だっけ。
おとなしい優等生タイプの美人な子がクラスの真ん中のちょっと悪そうな生徒と惹かれ合うっていうのはありがちで。
藤堂さんと灰野くんはまさにそれ。
「伊吹にこれを返してほしくて。頼んでもいい?」
なだらかな声が灰野くんを、伊吹と呼ぶ。
差し出された四角いプラスチックケースを受け取った。
あたしの手に渡ったCDは、灰野くんの好きな曲なのかな。
見たこともない歌手の名前。
ケースに入った細い傷。
ふたりだけの軌跡みたいに見える。
「今日伊吹に返す約束をしていたんだけど、私早退するから。ごめんね」
「ううん。でも早退って具合大丈夫ですか?」
「ありがとう、大丈夫。それよりどうして敬語なの?」
ふふっと口許を押さえて笑う藤堂さんは気品があって。
あたしより少し背の高い彼女は、年上、いや、何もかもが上に見えた。
「じゃあ、お願い」
藤堂さんは軽く会釈をして去っていく。
長い黒髪にのっかる光のリングが、眩しくって悔しいな……。
……藤堂さんと灰野くんが付き合い始めたのは、高校1年の春だっけ。