【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
心臓がバコバコ鳴り続けて、ついに俺はとどめを刺された。
「もうどうしよう……めちゃくちゃ幸せ……っ」
思わず漏れたみたいな藍田さんの小さな声。
なんかもう……無理。
「—―――っ」
バシンと音がしそうな払い方で藍田さんの手を剥がす。
彼女の手のひらがふわっと宙に浮いた。
「俺もう帰るわ!」
立ち上がった時、片手に持っていた缶からソーダが零れて。
飛び散る水滴の向こうで、藍田さんは目をまん丸にしているのが見えた。
「—――ごめん……っ」
真っ赤な顔で逃げ出した俺を、藍田さんは真っ赤な顔のまま見ていた。
……だっさ!!!
更衣室で絶叫したくなった。
これで中1の時、窓割ったの誰だよ。二回目かよ。
まじで藍田さんの前だと、あの頃と全然変わってないじゃん。
藍田さんは屋上でのあの事件の時と同じことを言いたくなっただろうな。
ナギとのたわいもない会話の延長に差し込んだあの言葉。
―――『灰野くんには、がっかりした』
思い知ったよ。
今でも変わらず、俺に藍田さんは不可能だってこと。