【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「あの、藤堂さんにコレを返してほしいって頼まれて……」
「花に?」
……花。
って呼ぶんだ。
そりゃそっか。
一年付き合った元カノを苗字で呼ぶわけないじゃん。
苗字に「さん」をつけられるあたしは、灰野くんにとって……。
いつかの昼休みを思い出す。
偶然聞いてしまった、クラスメイトの山本君と灰野くんの会話。
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「藤堂花ちゃんと別れたってマジ?」
「あー、うん。残念ながら」
「やっぱ元カノと同じクラスになったのが原因?」
「元カノ?」
灰野くんは不思議そうに山本君をみて、首を傾けた。
「とぼけんなよ!あの藍田胡桃ちゃんと付き合ってたんだろ?」
「あれは……付き合ったって言ったってなにもしてない。あんなのは、付き合ったに入んねーよ」
彼は、笑って言っていた。
あたしが、何度も思い出していた宝物みたいな一カ月。
灰野くんにとってそういう出来事だったんだってすごくショックだった。