【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

雨粒と傘

彗とリホちゃんに詳しく話すこともできなかった。


ナギちゃんにだって言えてない。


人生最大のショックなのかもしれない。


ザーっと地面をたたきつける雨粒を、放課後の昇降口に立って、しばらく眺めてから傘をさした。


あたしの代わりにでも泣いてくれているのかってくらい大ぶりの雨。


つま先がじわっと濡れていく。


「うわ雨やば!」


「最悪。山本もう一本傘持ってないの?」


「ねーよ!伊吹傘持ってこないとか、梅雨舐めすぎだろ」


その声に思わず振り返る。


……灰野くんだ。


ドキドキと鳴り出す心臓の無駄な動きが可哀想になる。


今朝あたしはこの傘の他に鞄の中に折り畳み傘も入れてきた。


紺色だけど、リボンやハートなんかが描いてある傘。


こんなの灰野くん使うかな。嫌がるかな。


でも貸しに行こうかな。


直結的にそう考えているあたし自身に呆れちゃうよ。


こういうのが、きっと重かったんだ。


あたしは前を向き直して、雨の道をゆっくりと歩く。


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