【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「藍田さん陸部だったもんね。俺久々にこんな長距離はしった……つかれた……」
灰野くんは傘を肩にひっかけて、両ひざに両手をついて、肩で息をしている。
「……な、なんで」
絶縁は?逃げたいのは?
なんで傘使ってくれて、喋ってくれるの?
あたしの目に一気に涙がたまっていく。
「今日は、全部ごめん」
灰野くんは鞄からタオルを引っこ抜くように取り出した。
ザーッと傘を叩く雨音。
灰野くんはこっちから目をそらして、タオルを広げたまま少し止まってしまう。
ピカっと空が光って、さっきより早く雷鳴が轟いた。
「……これ使って」
そう言ってあたしの髪にかけられたタオル。
「聞いてる?藍田さん」
聞いてるけど……状況についていけないよ。
戸惑って動かないあたしに、灰野くんはもう一度手を伸ばした。