【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
灰野くんの両手が恐る恐る、すごく優しくあたしの髪を拭いている。


「……っ」



頬に落ちた水滴まで優しくぬぐい取る。


漆黒の瞳があたしの髪、頬と視線をスーッと動かしていて。



「……は、灰野くん」


掠れるみたいな声で、情けない顔をして彼の名前を呼んだ。


「何?」


「……絶、縁は……っ?」


子供みたいに泣いちゃってごめん。


「そんなことしたいって思ってない。……全部ごめん。俺、藍田さんの前だと意味わかんないことばっか言っちゃって」


「じゃあ……しゃべってくれるの?」

「藍田さんが許してくれれば」

「そんなの……」


許すに決まってる、って小さな声は、灰野くんに届いたみたい。


「……いっぱいいっぱいでごめん」


ふいっと顔を背ける灰野くんを見たら泣きそうになった。




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