【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
灰野くんのタオルで嬉し涙を拭いてから、隣を盗み見る。



「灰野くん……可愛い傘似合う」


「嬉しくないんだけど」


「ふふ、でも似合うもん」


灰野くんがちらりとくれた視線。その目は、すごく優しくて、息をのんだ。



「雨やんできたね」


「本当だ」


ぽつ、ぽつと音が弱まって、ついに雨が止んだ。

雲の隙間から光の柱が差し込む。


どろどろの恰好で見上げた空がすごくきれいに見えた。


「ここ覚えてる?」


「え?」


灰野くんが指さしているのは、道路に設置されたオレンジ色のカーブミラー。



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