【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
あまりの空気の悪さに、山本君が苦笑いを浮かべて話に入った。
「おいおい、元カレカノさんたち、なんでそんなギスギスしてんの!?」
「えっ?」
……かれかの?
素っ頓狂な声が出てしまって、口元を両手で覆う。
また過剰反応しちゃった。
ねぇ、山本君。
灰野くんが「あんなのは付き合ったうちに入らない」って言ってたの、忘れちゃったの?
「だから俺たちは……」
灰野くんは眉根を寄せて、またかと呆れたような顔を山本君に向ける。
きっと灰野くんはまたあの言葉を言うんだ。
―――『あんなのは付き合ったうちに入らない』。
魂ごと凍り付いてしまいそうなその言葉を。
灰野くんの口から二度と聞きたくないよ。
だから、あたしは息を吸った。
「あんなのは、付き合ったうちに入らないよね」
あたし、灰野くんみたいに、笑って言えたかな。
泣きそうな顔にならなかったかな。
「……え?」
灰野くんの声がして、間があく。
この会話を聞いていた山本君も、嘘みたいに固まっている。
「え?」
硬直するあたしに、灰野くんはのんびりとでもかたく、口角を上げる。
「ごめんね。俺みたいなのと付き合ってたみたいな誤情報流されちゃって」
表情に反したトゲトゲした言葉が、あたしの心を引っ掻いていく。
誤情報と集約された、あたしたちの一カ月。
……間違い。
いや、そんなものなかった。
すくなくとも、灰野くんの中には、きっとなんにも無かった。
「うん。こっちもごめんね」
作り笑いを張り付けて、席に着く。
泣きそうだよ……。
潤んできた目をごまかすためにあくびの真似をしてから、ただの眠い人を装ってゆっくりと机に突っ伏した。
「おいおい、元カレカノさんたち、なんでそんなギスギスしてんの!?」
「えっ?」
……かれかの?
素っ頓狂な声が出てしまって、口元を両手で覆う。
また過剰反応しちゃった。
ねぇ、山本君。
灰野くんが「あんなのは付き合ったうちに入らない」って言ってたの、忘れちゃったの?
「だから俺たちは……」
灰野くんは眉根を寄せて、またかと呆れたような顔を山本君に向ける。
きっと灰野くんはまたあの言葉を言うんだ。
―――『あんなのは付き合ったうちに入らない』。
魂ごと凍り付いてしまいそうなその言葉を。
灰野くんの口から二度と聞きたくないよ。
だから、あたしは息を吸った。
「あんなのは、付き合ったうちに入らないよね」
あたし、灰野くんみたいに、笑って言えたかな。
泣きそうな顔にならなかったかな。
「……え?」
灰野くんの声がして、間があく。
この会話を聞いていた山本君も、嘘みたいに固まっている。
「え?」
硬直するあたしに、灰野くんはのんびりとでもかたく、口角を上げる。
「ごめんね。俺みたいなのと付き合ってたみたいな誤情報流されちゃって」
表情に反したトゲトゲした言葉が、あたしの心を引っ掻いていく。
誤情報と集約された、あたしたちの一カ月。
……間違い。
いや、そんなものなかった。
すくなくとも、灰野くんの中には、きっとなんにも無かった。
「うん。こっちもごめんね」
作り笑いを張り付けて、席に着く。
泣きそうだよ……。
潤んできた目をごまかすためにあくびの真似をしてから、ただの眠い人を装ってゆっくりと机に突っ伏した。