【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「両片思い?」
「そのへんのカップルより仲いいじゃん」
「そ、そんなことないよ!」
「うわうわ、顔赤ー!そんなムキになんなくてもいいのに。かわいいねぇ」
にやにやと茶化す佐藤君に、なんて返してみようもなくなったとき。
「—――藍田さん」
あたしの体が、その声無条件に反応する。
灰野くんだ……。
たちまち心拍数が上がっていく。
すっと、あたしと佐藤君の間に立った灰野くんは、言った。
「藍田さんが好きなのはナギじゃなくて、俺でしょ」
どっくんと心臓が大きく跳ねる。
あたしに、聞いてるの?!
……聞いてる。
だって、灰野くんあたしの方にしか体向けていないから。
「……えぇっと」
間抜けな声と共に、火照る両頬に手を当てながらうつむく。
「えー!?そっち!?」
佐藤君は素っ頓狂な声でそう言って両眉を上げてこっちを見た。
「じゃあ……ナギはなんなの!?」
「だから友達だってば!」
あたしが必死で答えると佐藤君は間をあけて溜息まじりに「えー……?」と声を落とした。
疑うようなその目はあたしに向いて、それから灰野くんに向かう。
「へぇ。いろいろあるんだなぁ……」
佐藤君は灰野くんの肩をこつんと叩いて、教室を出て行った。