【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
付き合って。


でも緊張してなにもかもうまくいかなくて。

なんにもしてやれない自分が悔しくてたまんなかった。


―――だけど。


オレンジ色のカーブミラーに差し掛かる。


ここで藍田さんを待っている時間も、待ってる藍田さんを見るのも、めちゃくちゃ好きだった。


別れても目が離れなくて、だから無理やり見ないように意識して。


消えたい自分を藍田さんを無視することで消した。


後悔しかなかったよ。


ずっと喋りたかった。戻りたかった。

ナギみたいに、笑わせてみたかった。



今だって緊張して、なんもできないし。

かっこわるいし、全然藍田さんの理想とはかけ離れているけど


でも、藍田さんだけだ。

俺はもう藍田さんしか見ない。



藍田さんの家の前に、ポニーテールの彼女が片手にビニール袋を持ったまま、きょろきょろして立っている。


「……っ、藍田さん!」



< 233 / 400 >

この作品をシェア

pagetop