【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「灰野くん、どうしたの?」


「あの……っ」


全力疾走しすぎた。息が切れる。

藍田さんはそんな俺を心配そうに見ている。


こんな時さえ、かっこつかない。ダサ。


「ちょっと、待って。……っ、はぁ、ごめん」


「う、うん」


はぁ、はぁ、とさっさと息を整えようとするけど、苦しい。


なんで藍田さん、顔赤いの?


でもその顔、俺めちゃくちゃ好き。


他の人に誰にも見せたくないくらい。



ていうより、全部。


本当は藍田さんの全部を独り占めしてしまいたい。


「……灰野くん、大丈夫?」


その声も。俺の名前呼ぶのも、全部好きだし。


「……え、なに?」


俺が見ると、目をそらしてポニーテールがぴょんと揺れるのも、大好きだ。


でも。


心臓が別の意味で激しく動いているし、藍田さんの前でこんなに長いことかっこつけて言えるわけない。


俺は自分の力量を学んでる。


俺に言える精一杯でほんとにごめん。


俺は結局息が整う前に、藍田さんに目を向ける。


ねぇ、絶対。


頼むから、聞き逃さないで。




「藍田さん……、好きです」






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