【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

幻覚と現実の狭間

藍田胡桃 side*




ドキドキドキドキ。

心臓がいまだに暴れている。


さっきの灰野くんって本物なんだよね?


全力疾走で、あたしのところに来てくれた彼が。


本物?いや、幻覚?



ナギちゃんのお見舞いに行くことも吹っ飛んで、あたしはリビングの片隅で三角座りしていた。



「胡桃さっき灰野くんいなかった?」


「やっぱりいた!?お母さん見てた!?」


じゃあ現実、なのかな?


「ベランダから見たけど。あの子かっこよく成長したわねぇ。小さい頃も整ってたけど、育成成功ね」


「お母さんイケメンすきだもんね、すごい言い方でびっくりしてる」


育成って。


「灰野くんって幼稚園の頃胡桃と結構仲良かった割に、小学校以降はさっぱりしてたわよね。お母さんがっかりだった」


「幼稚園の時灰野くんとあたしって仲良かった?」


「えー!灰野くん、胡桃にべた惚れだったじゃない。会うたびに走って『くうみちゃーん』って!もうほんっとかわいかった。正直胡桃より可愛かった」


「こら。ていうより全然覚えてないなぁ」


ちょっと嬉しくてにやけちゃうけど。


「はぁー。そんなんだからあんな最良の物件のがすのよ、胡桃は」


「最良の物件っていう表現にもびっくりしてる」


お母さんがうるさいから、部屋に入ってベッドに横になった。


本当に、あれって灰野くん?


幻覚?

また頭を巡っていく。


そんな時。
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