【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「藍田さん。見すぎだから、しかも近い」


「あっ」


気付けばあたしは信じがたいほど距離を縮めていて。


「っ、ごめん!!」


「……いいんだけどね。全然」


よそを向いて、こほんと咳払いする灰野くんの顔を目を細めてじぃっと見ている自分にやっと気づいた。


「……あぁ!!」


なんでこんなに見えないって……。

どうして気づかなかったんだろう?!


「コンタクト入れるの忘れてきちゃった!」


「……っなんでここまで気づかなかったんだよ」


灰野くんはクスクスと笑って、踵を返した。


「結構歩いちゃったし、灰野くん先に行ってて。遅刻しちゃうよ」


「バスで行けば余裕で間に合うよ」


バスで4つ先の停留所がたしかに学校だけど。

この近さでバスなんて使ったことない。


「灰野くんバス通学したことあるの?」


「うん。藍田さんはないの?」


「ない……。ちょっと楽しみ」


< 243 / 400 >

この作品をシェア

pagetop