【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
出発してすぐの右折、ブレーキに車体が揺れた。


……あ、やばい。


持っているビニール袋の中で揺れるプリンを死守しようとしたあたしは、それを抱きしめて、後ろに倒れかけた。


「ひゃっ」


すぐ後ろの見知らぬ男子生徒の胸に、背中を預けるようにもたれてしまったあたしは。


「ごめんなさい!」


そう振り返りながら謝って、姿勢を直すと。


「ううん。大丈夫だった?」


そこに、きらきらとした眩しい笑顔があった。


「あっ……はい!」


知らない人だよね?


でも知ってるからこんなにこっちを見てるの?


しかもめっちゃくちゃの笑顔。

誰だっけ、この人?


「その制服って、すず高?茂木高?」


「え?」


両方違うけど。



「……藍田さん!」



灰野くんは、名前を呼ぶと同時に、あたしの腕を思いっきり引き寄せた。


「なにしてんの」


その声は至近距離……!


くるっと灰野くんと場所を入れ替えられたあたしは、ぽかんと彼を見上げた。


灰野くんは眉間に皺を寄せている。


はぁ、かっこいい……。


「……俺につかまってて」


ふいっと顔を背ける灰野くんの胸が目の前にある。


そんな、それは。

どこに捕まれば、いいんだろう?


ここ?

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