【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「こ、こうでいいのかな……」
「え……う、うん」
灰野くんの胸下のあたり。シャツを両手で掴みながら、失敗に気付いた。
きっと、腕をつかむのが正解だ……。だって隣のカップルがそうしてるんだもん!
かといってイマサラ変えるのも……。
灰野くんの顔を覗うと、全然こっちなんて見ていなかった。
(南公園前~、南公園前~。)
アナウンスと同時にバスが停車する。
降りる人は0なのに、乗り込む人がぐいぐいと押し寄せてくる。
「は、灰野くん……」
思わず見上げてしまう。
「……ごめん、こんなに混んでるとは思わなくて」
ぴったり密着と言っていいくらい、今灰野くんの胸に貼りついている。
背中を後ろの人のリュックに押されて、ぐうっと前のめりになる神様からのご褒美に、息が止まりそうになる。
もうこれ以上くっつけない!ってくらいぴっとり。
灰野くんの呼吸と心音が全部手と耳と体にダイレクトに伝わる。
「灰野くん……」
のぼせそうな顔で、灰野くんを見上げる。
「何……」
ちらっとあたしを見下ろす、彼の火照った顔も、やたらにセクシーに見える目も
……極上。