【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

甘く響く君の声




灰野くんで頭がいっぱいのまま一日が終わった。



授業中ちらっと盗み見る灰野くんはいつもの5倍くらい寝ていたけど。



今日はこのあとナギちゃんのお見舞いに行くから。先生から託されたプリントを揃えてファイルに入れる。


「胡桃、これありがと。僕壊の最新刊よかったー!きゅんきゅんした!」



彗に手渡された漫画を受け取って


「でしょ!?今回のは今までで一番良かったよね!」


なんて盛り上がっていると。


「なになにぃー?僕壊の話?」


帰り支度をすませたリホちゃんも、顔を出した。


「そうそう、リホちゃんも読んだ?」

「読んだよー発売日に買ってるもん」

「やっぱりー?あたしも!アレ、あのシーン、やばくなかった?」


「やばかった!!」


きゃーっと両手を握りあって盛り上がるあたしたちのところに、山本君に背を押されながら灰野くんがやって来た。


「ちょっと、押すなって!」


「いいだろ。カ・ノ・ジョのとこなんだから」


「ねぇもう黙れ、山本」


山本君、灰野くんと今日も仲が良くて羨ましい……。


「えっと、どうしたの?」


あたしはどきどきしながら灰野くんを見上げる。


「あー、えっと……」


灰野くんは言葉を止めて、ふいっと目をそらしてつづけた。



「……一緒に帰らない?」


プッと彗が吹き出して。

リホちゃんも「ピュアか!」とつっこむし。


あたしは大きく頷きかけて、はっとする。


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