【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
甘く響く君の声
◇
灰野くんで頭がいっぱいのまま一日が終わった。
授業中ちらっと盗み見る灰野くんはいつもの5倍くらい寝ていたけど。
今日はこのあとナギちゃんのお見舞いに行くから。先生から託されたプリントを揃えてファイルに入れる。
「胡桃、これありがと。僕壊の最新刊よかったー!きゅんきゅんした!」
彗に手渡された漫画を受け取って
「でしょ!?今回のは今までで一番良かったよね!」
なんて盛り上がっていると。
「なになにぃー?僕壊の話?」
帰り支度をすませたリホちゃんも、顔を出した。
「そうそう、リホちゃんも読んだ?」
「読んだよー発売日に買ってるもん」
「やっぱりー?あたしも!アレ、あのシーン、やばくなかった?」
「やばかった!!」
きゃーっと両手を握りあって盛り上がるあたしたちのところに、山本君に背を押されながら灰野くんがやって来た。
「ちょっと、押すなって!」
「いいだろ。カ・ノ・ジョのとこなんだから」
「ねぇもう黙れ、山本」
山本君、灰野くんと今日も仲が良くて羨ましい……。
「えっと、どうしたの?」
あたしはどきどきしながら灰野くんを見上げる。
「あー、えっと……」
灰野くんは言葉を止めて、ふいっと目をそらしてつづけた。
「……一緒に帰らない?」
プッと彗が吹き出して。
リホちゃんも「ピュアか!」とつっこむし。
あたしは大きく頷きかけて、はっとする。