【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
電車からバスに乗りかえて流れていく景色を見ながら灰野くんのことばっかり思い出す。

どんな灰野くんも全部好きだなぁ……。


(○○病院前~)

あ、やばい。
あっという間に病院についちゃった。


四人部屋はもう貸し切り状態じゃなくなっていて、ナギちゃん含めて三人の入院患者がいるみたい。


そのせいなのかな。
どのベッドも、カーテンで囲まれている。


「ナギちゃん」

そう呼んだら、カーテンが揺れて隙間からナギちゃんが顔を出した。


「どーぞ」

ナギちゃんに手招きされて、カーテンの中に入る。


「なんかカーテン閉めると一気に狭いね」


「うん、気滅入るよ」


「だろうなぁ……。調子はどう?」


「平気」


「そっか、よかった」


点滴もついてないし、前より顔色もいい気がする。



「これ!プリン。あとDVD借りて来たよ」


「うわ、ありがとー」


目を輝かせて受け取るナギちゃんにつられて笑っちゃうよ。



「なんと賞味期限今日までだから、今日食べてね」


「んじゃ今食べる」


激極堂と書かれたシールをそっと剥がして、カップの蓋をあけてあげた。


「なにその過保護?」と笑うナギちゃんはプラスチックのスプーンでプリンをすくう。



「いただきまーす」


ぱくんと口に入れて、「うま」と声を漏らすナギちゃん。


喜んでくれてよかった。


「暑いのにならんでくれたんだろ?まじ胡桃可愛い。可愛いでしかない」


また、簡単に人を可愛いとか言っちゃうんだからね。



「そんなにお世辞言っても一個しかないよ」
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