【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「か、」


間接キスしちゃった!



「胡桃ちゃん浮気しちゃったねぇー」


「え!?」


青ざめるあたしをナギちゃんはケラケラと笑う。


かと思えば、「はぁー……」と疲れ切ったみたいに溜息が聞こえて。



こてんと、あたしの肩にナギちゃんの肩がぶつかった。



「そんなんで浮気なわけねーだろ」



ど……どうしたの?


らしくない、落ち込んだ声……。


「大丈夫?」


あたしはすぐ傍のナギちゃんの表情を確認したくて、くるっと首を回す。


ナギちゃんはただ静かに、あたしを見ていて。


見るからに鬱々とした表情……。



「ナギちゃん……」


「……なんかさ」


聞いてほしそうな声に「うん」と相槌を入れる。


「好きな子のために結構協力して、早く付き合えばいいとも思ってたんだけど……」


「うん」


「やっぱ、俺も欲しかったなぁーとか、思ったり……」


「後悔してるの?」


「んー。どうかなぁ」


しぃんと病室が静まり返る。そんな沈黙はすぐにナギちゃんがかき消してしまう。


「で、一方胡桃は幸せ絶頂でしたか?今日は」


突然、なんでおどけていうの?


「うーんと、ちょっといいことあったよ」


「よかったなぁー」


くしゃくしゃっと髪をかき混ぜる、大きな手。


「やっぱ胡桃が幸せだったらなんでもいいや、俺」


そう言って、ははっとナギちゃんは笑った。


「そんな投げやりにならないでよ」


ナギちゃんも幸せになってよ。


そう続けようとしたら、「ちょっとトイレ―」だって。

もうマイペースだなぁ。
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