【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「……はいはい。俺トイレ行くから。部屋で待ってて」


ナギちゃんが松葉づえを大きく動かして、去っていった。


ベッドに戻って、たべ終わったプリンを片付ける。


ついでに、物置になっている椅子も今だけ空けていいかな?


テレビ台の横に一旦置かせてもらって、


「灰野くん座って」

と手の平で指し示す。


「……なんか慣れてんね。嫁かよ」


「よめ?」


「いや……。今のは器が小さかった。忘れて」


「うん?」


灰野くん、座らないのかな?
せっかく荷物どけたのに。


かといって何回も座れって言うのもなぁ。


そんなちっぽけなことを考えていたら、
「おまたせー」とナギちゃんが帰ってきた。


よいしょと、ベッドに座るナギちゃんに目を向けてぎょっとした。


「ナギちゃん……前!ほどけてるよ!」


病衣は甚平みたいに紐で結んで前を止める仕組みなのかな?


目も当てられないほど胸元がはだけている姿に、あたしは目を覆う。


「あ、本当だ。胡桃結んで」


「ふざけんな!自分でやれ」


灰野くんはナギちゃんに詰め寄ると


「俺がやってやるよ」とナギちゃんの病衣のひもをひっつかんで、三回くらい玉結びにしてしまった。


「うわ最悪じゃね?胡桃の彼氏性格わる!」


灰野くんは眉間にしわをいれたまま、すとんと椅子に腰をおろした。



「……っあはは」と思わず笑っているあたしだけど、本当はすごくドキドキしている。


いいなぁ、あたしも灰野くんにそんなのされてみたい……。


とか、思って!


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