【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
ちがう、ちがうの!あたしは慌てて言葉を探す。

「あの……プリンをね」

「プリン……」

「か……き。か……キ」


ああもう、なんて言おう!


「かきかき?」


灰野くんは真剣な目であたしを見ている。


「あははっ、もうお前らってなんなの!ただ俺がつかったスプーンで胡桃もプリン食べただけ。間接キス……っプ」


肩を震わせているナギちゃんを見て、灰野くんは肺に溜まった空気を吐き出した。



「なんだ……びっくりしたぁ……」


あ、これって、許してもらえるの?


「もう、しません」


「うん。ナギとはしないで」


うん。あたし、灰野くんとしかしません……なんて、にやけかけたら。



「灰野ってほんと器ちっさいなぁ」


ってナギちゃんまた喧嘩うるんだから……。


「うるせーよ」


立ち上がってナギちゃんを見下ろす灰野くんは、ドスンとベッドの上に袋を落とした。


「いった!」


「それ、お見舞い」


「えーまじ?もっと優しく置けよー」


袋の中はDVDみたい。


「うわ面白そう。でもテレビカードもうないんだよなぁ」


ナギちゃんがそういうと、灰野くんはごそごそとポケットを漁って、取り出したカードをナギちゃんにべしっとたたきつけた。


「そんな気がした」

「ふはっ、めっちゃ気利くじゃん!」

「灰野くんすごい……」


あたしなんて、病院でテレビを見るのにカードがいることも知らなかったのに。


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