【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「灰野くん?」


覗うように顔をみると、灰野くんはよそを向いて言った。


「ごめん。手つなぐだけじゃ足りなくなったっていうか……」



ははっと照れ臭そうに笑う灰野くんは、やっぱりあたしの知らない人みたいで、あたしはびっくりするほどうっとりと彼を見ているんだと思う。



オレンジの世界ど真ん中で、灰野くんに心を溶かされちゃったあたしは言ってしまった。


「……キス、してみたい」


「え……」


たじろぐ彼は、ぎゅっとあたしの手のひらを握ってから、一歩近づいた。


< 265 / 400 >

この作品をシェア

pagetop