【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
だけど。


ちりんちりんと音がして、灰野くんのすぐ横を自転車が通り抜けたのを合図にあたしたちの距離が一気に開く。


「あ……えっと。ここじゃ目立つから……」


「うん……」


「とりあえず、送るね」


「うん」


は、はずかしいー!!!!

全力で恥ずかしいまま、家に送られて、しかも運悪くお母さんが玄関から出てきた。


「あれっ!灰野くん?え!なになに?どういうことー?」


学生ノリやめて!


「もう、部屋もどってよ!」


「すみません、送っただけなんで……」


「寄って行けば―?」


「えーっと、弟が待ってるし、その」


「あぁそっか。愁ちゃん、元気にしてる?何歳になったっけ?」


「もうすぐ四歳です」


もうひとことふたことお母さんと会話して、灰野くんは「それじゃ」とあたしに手を振りかけて、止める。


そしてあたしの耳もとに唇を近づけた。



「……キスは今度しよ」


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