【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
……冗談で言ったのに。


藍田さんの指先はおじおじと俺のボタンに触れた。

そしてゆっくりと一番上のを外していく。


「な、なんか緊張するね……」


……冗談に聞こえるわけないか。

俺はナギと違うんだから。


冗談なんて藍田さんに対して言ったこともないし、そんな近い距離にいない。


こんだけ近くにいても、14年の時間があっても、俺と藍田さんっていつまでも距離がある。


ナギは簡単に触れる柔らかそうなこの髪とか、頬とか。
じっと見つめ合える大きな瞳だとか。


俺がそれに触れられるのって一瞬なのに。

……悔しい。

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