【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「え!?なんで!?やだ!!」
「やだったって……」
「花ちゃんに会いたい!!」
灰野くんそっくりの大きな目からぼろぼろと涙が零れ落ちる。
……泣いちゃった。どうしよう?
「あたし、帰ろうか?!」
「ううん、ごめん。よくあるぐずりだから……」
そうは見えないよ。
藤堂さんじゃなくてあたしだったから、
愁ちゃんショックだったんだ……。
「はなちゃんがいいー!!」
わーんと泣く愁ちゃんを灰野くんが抱き上げた。
「その名前ださないで……ってか、愁。胡桃ちゃんだって赤ちゃんの時の愁と会ったことあるんだぞ」
さりげない”胡桃ちゃん”にドキっとしたけど。
「そうなの?」
涙を浮かべた愁ちゃんはあたしをじぃっと見つめている。
「うん、あたし愁ちゃんにミルクあげたことあるよ」
「愁は知らない人が来たら泣いてばっかだったのに、胡桃ちゃんだけは泣かなかったんだよ」
「へぇー」
「わかってんの?」
灰野くんは首を傾げながら愁ちゃんをリビングに送って行った。
「俺の部屋覚えてる?先行ってて」
「あ、はい……」
とんとん、と階段を上がって突き当りが灰野くんの部屋。