【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「えっと、数学だよね?」
「……うん」
問題集と教科書とノートを鞄から出しているうちに
「はぁー……」と灰野くんからため息が聞こえて……もっと落ち込む。
「愁のこと、ほんと気にしないで。ハマったらしつこいっていうか、そういう生き物だから」
「気にしてないよ!そうじゃなくて……」
……ううん。やっぱりそうかも。
「はぁ……」
溜息をついてもすっきりなんてしない。
「えっと、やろうか」
「うん」
「じゃあちょっと、この辺といてみて」
「はーい……」
灰野くんの向かいでサインコサイン書いてみるんだけど、すぐに手が止まる。
「……わかんない」
「え?」
目、そんなにぱちぱちしないで!絶句しないで……。
「三角関数の定義は覚えてるの?」
「定義?」
「ほら、このへんとか、こことか、これも……」
「こんなの覚えなきゃいけないの!?」
「……ええっと。試験まで1週間だよね」