【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「えっと、数学だよね?」

「……うん」


問題集と教科書とノートを鞄から出しているうちに

「はぁー……」と灰野くんからため息が聞こえて……もっと落ち込む。


「愁のこと、ほんと気にしないで。ハマったらしつこいっていうか、そういう生き物だから」


「気にしてないよ!そうじゃなくて……」


……ううん。やっぱりそうかも。


「はぁ……」


溜息をついてもすっきりなんてしない。


「えっと、やろうか」

「うん」

「じゃあちょっと、この辺といてみて」

「はーい……」


灰野くんの向かいでサインコサイン書いてみるんだけど、すぐに手が止まる。


「……わかんない」

「え?」

目、そんなにぱちぱちしないで!絶句しないで……。


「三角関数の定義は覚えてるの?」

「定義?」

「ほら、このへんとか、こことか、これも……」

「こんなの覚えなきゃいけないの!?」

「……ええっと。試験まで1週間だよね」

< 291 / 400 >

この作品をシェア

pagetop