【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「えーめっちゃラブラブじゃん。引くわー」
その声に振り返ると……ナギちゃんだ。
上から下まで見てみるけど、間違いなく松葉づえをついて学校に来ているナギちゃん。
「ど、どうしたの!?退院したの!?」
「そうそう。ちょっと学校に用事あってきた」
「えー、退院おめでとう!!」
「ありがとー」
「うわー私服だ」
「そりゃそうだろ」
「なんかいつもと全然違う。目立ったでしょ」
「松葉づえがまず目立つからなぁー」
昨日もおとといもお見舞いに行けなかったから、ちょっと心配してたけど、よかった。すごく元気そう。
「退院おめでと」
灰野くんがぼそっというと、ナギちゃんは「どーも」って。
この二人の空気感って良くも悪くも普通でもない、いつもなんか独特。不思議。
「ふたりともお見舞いいっぱいきてくれてありがとなー。今度なんかお礼するわ」
そう言うとナギちゃんは片方の松葉づえを浮かせて「んじゃ車待たせてるから、じゃーなー」って。
「ひとりで大丈夫なの?」
「余裕」
颯爽と帰っていく後ろ姿を見送った。
この時はまだナギちゃん、こんなにいつも通りだったのに……。