【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「……俺の好きな人は、藍田胡桃」
え……?
ドックンと心臓が揺れた。
「な、なにを冗談……」
「本気だよ。俺は、胡桃が好き」
ナギちゃんのことはよく知っている。
こんな顔して冗談はいわない。
”ナギちゃんがどれだけその人を好きか、あたしは知ってる。”
怒涛のように頭に流れてくる、ナギちゃんの言葉。
「すげぇ好き。胡桃のこと」
心臓が意味わかんないくらい速い。
「で、も、ナギちゃんあたしと灰野くんのことあんなに応援して……」
あ……。繋がっちゃった……。
他の人との恋を支えるなんて報われない恋の仕方をしていたナギちゃんと、
その想いをいくら聞いても、一ミリも気づかなかったあたしはきっと、”鈍感な人”。
「……な、ナギちゃ……」
「中1からずっと好きで、でも無理だし。胡桃はずっと灰野じゃん」
中1からずっと……
高1からじゃないの……?
「……ナギちゃん中2と中3のときずっと彼女いたよね?」
「付き合ってみたら誰かひとりくらい好きになれるかなと思ったんだけど、無理だった」
「そんな……」
「言うつもりなかったんだけどなぁ。もう終わりにしようかと思って。聞いてくれてありがと」
ナギちゃんはいつもみたいに、あたしの髪をぐしゃっとしてから、教室を出て行った。
その日を境に、ナギちゃんは……。