【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「そうそう胡桃。この前俺、お見舞いに来てくれたお礼にって、胡桃の行きたいところ聞いたじゃん」
「あ……うん」
「チケット取っといたよ。僕壊の映画、二枚」
映画?
なにそれ?
ナギと藍田さん、二人でいくの?
いやいやいや、ちょっと、
「待てよ。俺それ、絶対許さないからな」
「灰野はそんな睨むなよー。ほら送っといたよ」
するとなぜか、俺のスマホが震えた。
確認してみれば、映画のスマホ決済されたチケットのQRコードが届いている……。
「え?」
「胡桃の行きたいところだから。灰野が連れてってやってよ」
「なにそれ……?」
茫然とする俺なんかもうナギは興味ないとばかりに、藍田さんを見て笑っている。
「灰野と僕壊、観にいけんの嬉しい?」
ナギが見上げる先。藍田さんはもう喜びを隠そうと必死で。
「ありがとう……ナギちゃん」
藍田さんの口元は努力も無念に喜びがバレた。
「それそれ。俺ね、胡桃が嬉しそうに”ありがとう”って言うのがたまんなくて。でも胡桃が一番喜ぶのは、そのヘタレの隣なんだよなぁ」
……え。なんなのこいつ。
「リリカたち、なんか飲みに行こーぜ」
「「「うん!」」」
ナギは女子たちを連れて、教室をあとにした。
藍田さんも、俺も、彗もリホも山本も佐藤も……つーかクラス全員が唖然としている。
「ナギ、骨折れたうえに失恋して……ぶっ壊れちゃったのかなぁ」
彗の言葉にクラスは静まり返った。