【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

「……は、はずかしい」

「離した方がいい?」


ふるふるっと首を何度も横に振る藍田さん。


白い肌、頬だけリンゴみたいに真っ赤で。

可愛……。

絶対、離したくない。





とかいって早い段階で離してしまった手はふたたび繋がれることもなく。


気まずいほどの沈黙の中、
たどり着いた映画館。


今観ている僕壊は、人気若手俳優がひたすらにめちゃくちゃに甘いセリフを吐いている。


もう聞いていられないんだけど。


そう思って隣を見ると、藍田さんは恍惚とした表情、憧れ全開でスクリーンを見ていて。


『おいで、凛』


いつの間にか、ベッドに誘ってるし。

こんなん、藍田さんと観んの?


藍田さんの目はスクリーンから一秒も離れない。


” 胡桃ちゃんは理想高いからそこんとこ頑張って ”


いつか、そんな機会がくるのか、俺たちには全っ然想像もつかないけど。


『凛、愛してる……』


あいしてる。と言いながら上に覆いかぶさって、お互い求めるようにキスをして……。


あ、場面変わった。


藍田さんの憧れは、とりあえず甘くてめちゃくちゃに愛を囁くやつなんだろうな。


すっと、目を向けた藍田さん。

隙ばっかりのその顔。

ぼうっと見惚れて半開きの赤い唇とか、きらきらした目とか。


……可愛い。


そう思って見つめすぎたのかもしれない。


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