【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「えっ?」


パッと藍田さんがこっちを向いたその距離はものすごく……近い。


「灰野くん……観ないの?」


……そんな顔見たら、我慢できないし。


下あごを手で触れて、上を向かせたら。


藍田さんはまん丸な目で俺を見ていて。



もうほとんど本能のままに、藍田さんの唇に唇を重ねた。


チュッとだけ、一瞬。


「……は、灰野く」


「映画、いいとこ始まったよ」


なんて、適当にスクリーンを指さして、藍田さんを誘導する。


暗がりに支えられた、真っ赤な顔した俺って言うのは、誰もが言うようにヘタレかもしれないけど。


……わけわかんないくらい好きなんだから仕方なくない?


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