【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
朝から晩の灰野くん
◇
高二の5月末にある行事。
2泊3日の勉強合宿というのは強制参加で、今日がその一日目だ。
毎日10時間の勉強を強いられるなんて、頭がパンクしそう。
―――悪魔の合宿。
そう呼ばれる理由が、合宿開始5時間目で理解できた。
……きつすぎる。
すぐ隣でベリーショートの茶髪をがしがしと書いて「もうだめぇ」と音を上げる彗に、同調の笑みで返す。
「疲れたよぅ……」
力尽きたように机に伏せる彗。
あ、だめだよ、彗!
「寝たら起きないんだから寝ないで!」
「だってもう無理だもん。逆にさぁ、なんで胡桃はそんなはかどってるの?意味不明ー」
「はかどってはないけど……」
「だって全然目さえてるじゃん」
ふわぁとあくびをする彗は目を閉じた。
「もう、彗……あ、寝ちゃった」
テーブルを挟んですぐそこに座るナギちゃんに目をやると「寝かしとけ」だって。適当だなぁ……。
班ごとに行動するこの合宿で、あたしは灰野くんと同じ班になった。
女子は彗とリホちゃんという子。男子はナギちゃんと灰野くんと山本君。
合計6人で一つのテーブルを囲んで勉強しているこの状況が、二泊三日分続くというわけで。
灰野くんが傍に……それどころか目の前にいる。
それがあたしの眠気とかだるさとかを吹き飛ばしちゃうんだよ。