【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
灰野くんと藍田さん
藍田胡桃SIDE*
◇
「でも……」
でも、あたし、ナギちゃんにそんな話してないよ。
彗とリホちゃんには話したから、そこから聞いたのかわからないけど……。
あたしだって、そんな話ナギちゃんにできるわけないのに。
……そんなことするように見えるの?
誤解しないで。
そんな軽蔑した目で見ないで。
どうして声にならないんだろう。
「ごめん、教室戻るわ」
そう言って離れていく灰野くんに、「待って」さえ言えなかった。
涙をグイッと拭って、震える息を細く吐いた。
その日のお昼休み。
食欲もないし、気分転換に廊下を歩いていたら、渡り廊下の方に灰野くんの姿が見えて咄嗟に柱の影に身を隠した。