【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「離れろよ……っ」
ナギちゃんの背中をひっつかんで助けたくれたのは、灰野くんで。
「痛ー。そんな強く引き離すなよ」っと、よろけたナギちゃんは姿勢を直した。
「だって、灰野になにができんの?」
くすくすと笑うナギちゃん。
灰野くんは、強い舌打ちを一回した後で、あたしをまっすぐ見つめて言った。
「俺はあの時みたいにダサいままじゃねーよ」
目の前で、綺麗な漆黒の瞳。
長い前髪がさらっと揺れる。
近い。
近くて、どこに目をやればいいのかわからない。
目を合わせられない。そんなことしたら息が止まっちゃう。
だから彼のピンク色の唇に目線を下げる。
その唇がゆっくりと動いた。
「なんで唇見てんの?……キスしたいの?」
掠れるような甘い声にしびれそう。
心臓がバクバクと暴れている。
「ねぇ、藍田さん」
上気する頬。
はぁ、と息を吐くあたしに、灰野くんは言った。
「俺とナギ、どっちとしたい?」