【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
黒レースの彼女
藍田胡桃 Side*
◇
カポーン。
床に落ちて転がる桶を、立ちのぼる湯気ごしにぼんやりと見つめる。
それを片付けてから、リホちゃんと彗と一緒に大浴場のお湯に浸かった。
……灰野くんのことが、頭から離れないよ。
あたしに詰め寄った灰野くんに「俺とナギ、どっちとしたい?」ってキスのことを聞かれた。
灰野くんは、なんでそんなこと聞いたんだろう。
だって、藤堂さんに「すきじゃないなら、やめたほうがいい」って言われたらあっさり身をひいちゃったんだよ?
あたしを「好きじゃない」ってことじゃん……。
わかってるけど……。じゃあなんでそんなこと聞いたのって、堂々巡り。はぁ。
でも、ナギちゃんはさんざん煽った帰り道、
「よかったじゃん。脈ありそうだよ」
って、真逆のことを口にした。
どこをどう探したら脈がありそうなの?
もう……わけわかんないよ。