【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「だってさぁ、もう13.4年の付き合いでしかも元カレなのにあの距離感。一種の才能だと思う」
……鬼だ。
泣きそう。彗を見ると、うんうんと大賛成しているんだから更にひどい。
「なんか似たもの同士だもんね。NとNはめちゃくちゃいい例え。水と油ではない感じ」
「でしょー?」
ひどくない、この二人?
「胡桃ちゃんは、どうやったらくっつくと思う?」
「……わ、わからないです、先生」
ぷるんとした厚みのある唇がやたらセクシーにあたしの耳元に近づいた。
「どっちかが、S極になればいいんだよ」
S極に……。それは一体?リホ先生?
「灰野くんは、多分だめだなぁ。なってくれないから胡桃ちゃんが変わるしかないね」
「具体的にはどうすればいいの?」
「それは考えなよぉー、とにかく胡桃ちゃんから攻めない限り、この恋はどうにもならないまま同じ十数年を繰り返すよ」
「えぇ……それは嫌」
あたしはお湯に浸かって必死で考えた。
攻める。フォワード。
花形。
そんなのあたしにできるのかな。