【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「あちー。胡桃ぃ、暑すぎるからリホと私、先に部屋行ってる!うちら髪短いし部屋のドライヤーで乾かすね!」
「うん、わかった!」
たしかに、ここ暑いなぁと思いながら、手をひらひらと振る。
ええっと。パーカーはどこだっけ?
手探りで取り出そうとカバンを漁った時、ガチャリとなにか硬いものにふれた。
……部屋の鍵だ。
そういえばあたしが持っていたんだっけ。
あれ?
これじゃあ二人とも部屋に入れないじゃん!
大慌てでパーカーを羽織って、ショートパンツを勢いよく履きあげる。
カバンに出しっ放しの化粧品を詰め込みながら、濡れた髪にタオルを引っかけて、真っ赤な暖簾をくぐって走りだした。
「彗ー!リホちゃーん!」
あぁ、もういない。
エレベーターまでに間に合うかな?
廊下を駆ける足元で、白いスリッパがペチンペチンと床を叩く。
エレベーターって右だったっけ?
そう思って角を曲がった時。