【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。
「見るな!」
灰野くんの短い声が廊下に響いて。
あたしに背を向けて、壁を作るみたいに立ちはだかっている。
「藍田さん、ファスナー上がりきってない!」
「え!?」
ファスナー?!
胸元に視線を落として手を当てると、胸骨の下までファスナーが降りている。
「きゃあああああ!!」
半分前が開いていると言っていい状態に青ざめて絶叫した。
「はやく閉めて!」
慌てすぎてもたつく指。ファスナーをやっと上にあげられた。
最悪……。
こんな子供っぽい下着で、藤堂さんみたいなボリュームのない体を灰野くんに見られた……。