【完】俺がどんなにキミを好きか、まだキミは知らない。

俺のこと好きなの?

灰野伊吹(はいのいぶき)SIDE* 




俺は今、笑いそうになるのを堪えている。


クラスメイトというか、幼馴染で保育園の頃からの腐れ縁の藍田胡桃(あいだくるみ)さんの挙動不審な動きが、ちょっと面白かった。


藍田さんは、ばちんっと目が合ったかと思えば、首もげないそれ?って聞きたくなるような顔のそらし方をする。


高二で同じクラスになってからの彼女はいつもそうだ。



そういうのを、意識しないわけではない。けど……。



「もうみんな出したよね?提出しに行くよ?」

「いってらー」


俺は全員分のプリントを抱えて、職員室へ向かった。


窓から吹き込んだ風は、初夏の匂いをたっぷり廊下へ送り込んでくる。


風にめくれたプリントから覗く” 藍田胡桃 ”の文字が俺の目に飛び込んで、一秒を止めた。

はたはたと風に震える紙の端をつまんで、藍田さんの一枚を引っこ抜く。


一番上へと差し替えられた藍田さんのプリントを、午後の日差しが穏やかに照らしている。


その光が浮き上がらせた筆跡の影に「あ」と思わず声が出た。



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